翼竜図書館の最近の記事

明けましておめでとうございます。(ほったらかしでしたが)今年もよろしくお願いします。

ところで、先日イージーライダーの動画をみました。

イージーライダーというものはよく知りませんが、あの男性二人はきっと背が高いんだと思います。バイクは好きです。乗ったことありませんが。しかし、ああいう形のバイクはあまり好きにはなれません。どうしてかというと、手足が長い人は余裕だけど背が低くて短足短腕の人にはちょっと厳しそうだ。

私は身長150センチしかないので、乗るとしたら手足を精一杯のばしてのるはめになるだろう。だぶん、こんな感じだ。
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<解説> 自分が小さいからって・・・・・・

敬老の日

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 もうすぐ敬老の日だがもしも敬老の日にお年寄りの方をすっぽがしてしまった場合、あなたならどうするだろうか?エラノールはいい言い訳を思いついた。


「年寄り扱いしたら気を悪くすると思って。」

〈解説〉
しょうもない奴。

 俺が一人で祭を楽しんでいると由紀が
「ガルムー」
と言いながらやってきた。よおとあいさつを返すと
「あのショー、見に行かない?」
と悩殺笑顔で言ってきた。こいつ、こうすれば俺が断れないのを見越してやってんじゃねえか・・・ではなく、由紀の事だ、そんな事全く気付いていないんだろう。美しさだけでなく、天性の素晴らしいかわいげまで持つ女を俺は由紀以外に知らない。
「いいぜ。」
と、返事をした。
 月に叢雲花に風とはこのことで由紀との楽しいひとときはそう長く続かなかった。うるさいのに出くわしたからだ。
「デート中なのお?」
うるせえよ。お前の方こそデート中だろうがシグ。そう言ってやると例のうるさい女は俺のふくれっ面に尻尾を振りながら悪戯っぽい笑顔を向けてきやがった。
 由紀が犬も食わない喧嘩には無関心でショーに魅入り、ファルコンはひたすらおおらかに笑っている。そのうち四人ともショーに魅入っていた。
 超人族じゃなきゃあんな真似はできないだろう。超人的とはあれを指すのだ。
 このショーは春祭り恒例行事だという。イブ様も春祭りに来ておられる。カトリーナさんと彼女の親友トートさんもいる。レンジャーの専務殺人隊員トート、無口無表情女トートだ。ふたりは同居しているらしい。それにしてもカトリーナさん、そんな無口無表情な人を相手によくそんなに陽気に話せるもんだな。
 ついでに言うとコルビに惚れるという変わった趣味をお持ちの方アルタイルが彼女と一緒なのも見えた。
 それからジャックという茶髪の男の人がギターを弾きながら歌っているのを聴いた。由紀はとても真剣な顔をしていた。ジャックさんのギターを弾く手を凝視している。
「弾いてみるかい?」
ジャックさんが由紀に訊いた。由紀は少し考えてから頷いた。そういえば以前由紀の家に行った時、彼女の部屋には使い古したギターがあったっけ。
 由紀の演奏もなかなかのものだった。共通語の歌だった。由紀が少し哀愁を漂わせているように見えたのは俺だけだろうか?
 夜が更けてみんなはしゃぎ疲れ、それぞれ寝に行った。部屋にファルコンがいないと思ったら外でシグと二人きりで何か話しているのが窓から見えた。だからお前の方がデート中だろ、シグ。
<解説>
カトリーナの名前の由来はハリケーンからです。天性の素晴らしいかわいげとは宮崎あおいみたいな感じのやつです。(エラノールは宮崎あおいが好き)

眠たそうに目をこすったりあくびをしたりしながら周りの家を見渡すとすでに住人達は寝ているのが分かる。もう夜中だ。
「そんな眠たそうな顔して歩いてると転んじゃうわよ?」
愛想の良さそうな若い女性の声が聞こえた。振り向くと黒に少し茶色がかった髪を持つ女性が立っていた。(若くて美しいのは超人族なので言うまでもない)ここの住人だろう。
「館に行くんだったら少し道が違うわ、由紀ちゃん。」
眠気をこらえながら歩くうちに道を間違えたらしい。由紀はこんばんはと挨拶をした。
「あ、私はカトリーナ。よろしく。」
女性は少し遅れて自己紹介をした。それから二人は一緒に歩いた。
「コルビに彼氏がいるって本当なんですか?」
由紀が訊いた。
「え?ああ、うちの息子がコルちゃんと仲がいいわ。」
カトリーナは少し笑いながら話した。
「コルちゃん?」
由紀は聞き返した。
「コルビのことよ。」
カトリーナは答えながら左手に少し触れた。
 館に着くとまず洗面所に行って顔とジャケットについた血を洗った。部屋に入るとシグとコルビは熟睡中だった。ジャケットを脱いでベットに腰かけた。
「片付いた?」
由紀に気付いたらしいシグが訊いてきた。
「片付いたよ。ごめん、起こしちゃった?」
「いや、たまたま目が覚めただけ。」
シグが答えた。超人族でしかも経験豊かな戦士なら起きても良さそうだが、コルビは寝ている。
「コルビ寝てるの?それとも狸寝入り?」
由紀は尋ねた。
「寝てると思うよ。疲れてたみたいだし。名前忘れたけど強い酒大量に飲んでへべれけになっちゃってさあ、ガルムが殴り倒して無理矢理寝かしつけたんだ。」
由紀は目をぱちくりさせた。
「冗談だって。でも酒を大量に飲んだのは本当。へべれけにはなってないよ。」
シグは面白そうに笑いながら言った。
「おやすみ。」
由紀はすとんと眠りにおちた。シグは大酒のみの指揮官を少し見つめた後また眠りに落ちた。
 翌日由紀達は食堂で朝食をとっていた。
 ファルコンがテレポートしてやって来た。
「おはよう。」
あいさつする。
「由紀が第四隊に入隊することが決まったらしいよ。入隊には同意するよね?由紀。」
ファルコンが由紀達に言った。由紀は頷いた。ガルムはああそうかと一応は反応し、シグは由紀が気に入っていたらしく由紀が自分と同じ隊に入ってうれしそうだ。コルビは全く反応がなく大した感慨もなさそうに朝食を食べている。由紀はちょっと不安だった。レンジャーと言っても一体何をすればいいのだろうか?
 「まだあ?」
二人の若い女性がいる。尋ねたのは白い髪を持つ恐らく超人族の女性。
「まだよ。さっき訊いてからそんなに経ってないわ、メレス。」
答えたのは黒い髪にくりくりした大きな黒い色の目を持つ持つ超人族の女性。メレスと呼ばれた女性は退屈そうにあくびした。
「待ち疲れたよ、エステル。」
メレスが黒い髪の女性に言った。どちらかというとメレスがしっかりとした体つきをしていてエステルの方が少し華奢な体つきをしている。 
「まだ?」
メレスが訊いた。
「同じ質問を何回もしないで。」
エステルはうんざりしたように言った。
 向こうから一羽のカラスが飛んできた。
「あ、来た!」
メレスはそう言いながら飛び出していった。エステルが追いかける。カラスが地面に着地しながら人の姿に変わった。雪谷の服を着ている。そこへメレスが勢いよく抱きついた。
「あねさん!」
メレスが言う。
「苦しいわ。」
コルビは無表情で言った。エステルは抱きついたりせずに礼儀正しく挨拶した。それから二人は一緒に歩いた。
 春のお祭りの準備に人々は忙しく働いていた。仕事のある第一隊以外のレンジャー達も参加している。コルビ達三人も参加することにした。
 雪谷の春祭は大盛り上がりだ。大ご馳走に楽しいショー。誰も彼もが楽しんでいる。コルビはアルタイルと楽しみ、ガルムは基本的に単独、シグはファルコンと一緒、そして由紀は女性たちにかわいがられていた。
 どうやらカトリーナは女性たちのリーダー格らしい。最年長であるだけでなく、そういう気質があるのだろう。
「ねえ、あれ見に行かない?トート。」
カトリーナが話しかけたのは黒い髪の女性だった。腰に片刃の剣をさしている。その女性は陽気な人ぞろいの雪谷では珍しく無口無表情だ。コルビのように感情を隠しているのではなく感情がもともとないように見える。女性は無表情なまま首肯した。
 トートは由紀の視線に気付いて振り向いた。灰色の目にはあまりに喜怒哀楽がなく、一体いつもは何を考えて何をしているのだろうと由紀は疑問に思ったほどだ。少し視線をそらして振り向くとトートは向こうの方に遠ざかっていた。


<解説>
トートって誰かに似てません?

旅人放浪記 第十七話入隊

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 ところで第四隊の面々はまだコルビと顔をあわせていなかった。
「あれ?コルビ、なんかやつれなかった?」
シグが開口一番言った。
 確かにコルビは明らかにやつれていた。それになんとなく疲れた顔をしている。ただ単に疲れているのではなく、悩みごとをかかえていてそれで疲れているような顔だ。
「悩みごとでもあるのかい?」
ファルコンの問いにコルビは
「ほっといて。」
といつもの調子でそっけなく答えた。アルタイルやアルタイルの母は思っていても口に出さなかったが、内心気になっていたかもしれない。
 由紀が第四隊に入隊することになった。
「ただし、今から言う仕事をうまくできたらです。」
イブが言った。どの程度の腕なのか楽しみだとでもいうようににこにこ笑っている。
「仕事、ですか?」
由紀が聞き返す。
 イブの話によるとその仕事とは雪谷から歩いて少しかかる所に有名な山賊がいて、そいつらを全員始末するというものだ。全部で二十人いるらしい。
「彼女にやらせるんですか?イブ様。かなり腕がたつ奴もいるって話ですけど。」
コルビが言った。由紀にできるか疑問だったのだ。
「ええ。だから由紀にやらせるのです。」
イブにきっぱりと答えられてコルビは反論できなくなっった。
 という訳で由紀は愛用のベージュのキャスケット帽をかぶって夕暮れの中を歩いていた。その顔はどこか不安そうだ。
 由紀が歩いているのは開けた森の小道だった。由紀は立ち止まった。そして道をはずれて森の中に歩いていき茂みに身を隠した。
 そこでしばらく待っていた。
 辺りが真っ暗になった頃、山賊たちがやって来た。合計二十人。何人かは手に松明を持っている。
「風使いって知ってるか?」
一人が言った。
「ああ。風を起こしたり切り裂いたりできるんだろ?で、そいつの血を飲んだらその力が手に入るんだってよ。」
風使いの命が狙われる大きな理由は風使いの血を飲むと風使いの力が手に入るという言い伝えがあるからだ。
 こんな夜だと松明なしでは由紀も何も見えない、かもしれないが由紀は最近五感と第六感が鋭くなるのを感じんていた。なので夜でたいまつなしでも大丈夫なのだ。
 由紀は強い風を起こして松明を消した。
「おい、火ぃつけろ!」
暗い中、ざしゅっ、ざしゅっ、という音が何回か聞こえた。
 ようやく灯りがともった頃、五人の男が首をなくしていた。
「ひ・・・ひ・・・」
若い男が恐怖の声を漏らした。
 由紀は考えた。まともに戦っても勝てないのは分かるが同じ手が何度も通用するようには思われない。どうすればいい?
「油断するな。」
頭らしい男が言った。
 どうすればいい?どうすればうまく全員始末できる?
 月が雲から出てきた。一人の男が月明かりを頼りにこっちに歩いてきた。
「あの殺し屋、どこにいやがる。こそこそ隠れやがって。」
荒い息をはきながらゆっくりと歩いている。由紀には気付いていないらしいが、すぐに気付かれてしまう。あともう少しで気付かれるとういう距離になると由紀は男の首を風の刃ではねた。
 返り血が少女の顔に飛び散る。
 全員が振り向いた。紺色のジャケット姿の少女を見つけた。
「あ、あいつか?」
男の一人が言った。
「バカいうな。あんな小娘が人を六人も殺すか?」
もう一人はそういうが、
「いや、そいつだ。」
頭が言った。そしてそれが彼の最後の言葉となった。由紀が片手を振ると体が真っ二つになって死んだ。
「お頭ーーーー!」
男たちが叫んだ。死体を見て嘆いた。が、嘆いている暇などなかった。そうしている間に三人が首をはねられたり体を真っ二つにされたりして死んだ。
 「あと十三人。」
由紀は呟いた。男達が襲いかかってきた。手にはそれぞれ刃物を持っている。
「どおりゃあ!」
 間一髪の所で由紀は高く後ろに跳んで大きな木の上に着陸した。実際由紀は自分の脚力では少ししか跳んでおらず、風を起こして体を吹き飛ばしたのだ。さらに二人が見えない刃で倒れた。
 由紀は木から飛び降りながらジャケットの左袖からナイフを抜いた。殺し屋を前に山賊達は緊張気味だ。由紀は荒い息を吐いて堅い表情をしている。 
 由紀は一歩踏み出した。男達は踏み止まる。もう一歩踏み出す。
 正面にいる若い男と目があった。男は由紀に襲いかかった。由紀は素早く反応しよけた。由紀の目が一瞬黄色く光り、男は風に吹き飛ばされた。周りにいる男達も強い風に少しひるんだ。
 由紀は隙を逃さず、ナイフを持っていない手を振り上げ、風の刃で若い男を切り裂いた。
 山賊達が一斉に襲いかかってきた。最初の一人をナイフでなんとか斬る。風で男達を吹き飛ばして間合いをとり風の刃で彼らを斬っていった。
 残り一人。由紀はさらに緊張している。この男は初めから今まで余裕の表情で、由紀はなんとなく自分よりもずっとうわてなのではと思っていた。
「お嬢ちゃん、なかなかだね。」
男は言った。五十代程の男だ。普通の表情をしている。
「だがまだまだ甘いな。こいつらは戦闘訓練など全く受けていないから良かったが。」
「あなたは誰です?」
由紀は訊いた。
「わしか?ただのじじいだ。」
そんなことは見れば分かると由紀は思った。
「攻撃してこないんですね。」
由紀が言う。
「焦ってはならん。」
二人は円を描くように歩き始めた。
 由紀がつまずいて転びそうになった。男がナイフを片手に襲いかかってきた。由紀は慌ててよけた。由紀はナイフに向かって右の手のひらを向けた。手のひらから空気のたまのようなものが発射されナイフは弾きとばされて遠くに飛んでいった。
 さらに片手をふって空気のたまを投げ、それは男の脇腹にあたった。男はひるんだ。
 あれは相当痛いだろう。ボールが当たったようなものだ。ボールよりも威力はあるだろうが。
 もう一発空気のたまを男に向けて投げた。たまは男の頭を砕いた。
「死んじゃった・・・・・・・・・」
由紀は呟いた。しばらく呆然としていたが、すぐに我に返ってかぶりを振った。空は星がまたたいている。
 風使いは自然の風と心を通いあわせたり、風を読んだりすることができる。風はのんびりと穏やかに吹いていた。由紀は雪谷を目指して歩いた。
<解説>
長いですね、はい。

旅人放浪記 第十六話 雪谷

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 ビブロストに春が訪れた。楽しそうに歩く人々(この小説では人とは人間だけを指す事もあるがこの場合は人間以外の種族も含める)の中には由紀もいる。彼女は後にしてきた故郷の春を思い出してしまい、ホームシックの念にかられた。

戦闘訓練が一段落した後、由紀はオリバートの喫茶店に行った。
「増田さんっていうのはあんた?」
由紀は話しかけられて振り向いた。話しかけたのは由紀と同じ歳位の少女だ。ポニーテールの黒い髪はとても良く似合う。ジーンズに薄い水色の防水パーカーを着ている。先が矢印のようになった尻尾とコウモリの翼のような大きな翼を持つ。
「そうですけど、あの、誰ですか?」
不思議そうというより怪訝そうな顔をしている由紀に少女はお構い無しに、
「あたしはシグ。炎使いだよ。」
と、笑顔で普通に自己紹介した。それからようやく由紀の怪訝そうな顔に気付いたらしく、
「どうかしたの?」
と、不思議そうに訊いた。
「何で私の名前知ってるの?」
由紀が訊いた。
「ガルムと知合いなんだ。」
と言った。由紀は以外そうな顔をした。
「シグか。?」
由紀の父がやって来て言う。
「太一、もっと早く来てよ。」
シグが言う。太一とは彼の名前だ。
「来るのが早いじゃないか。」
太一が言う。しかしシグは、
「あんたが遅いだけ。」
と言う。
次の日、由紀はビブロスト由紀はビブロストから旅立たなければいけないと聞かされた。
紺色のジャケットを着て黒い長ズボンをはき荷物を背負った由紀の姿がある。
「ワープホールをくぐった先でシグと落ち合うだろ。」
父が言った。
「はい。」
由紀は笑顔で返事をした。ワープホールが現れた。
「気を付けてな。」
父の言葉に由紀は分かっているとでも言わんばかりの笑顔を向けながら手を振り、ワープホールをくぐった。
そこは見渡す限りの大草原だった。背の高い草が風に揺れている。由紀は途方に暮れたようにそこにしばらく立っていた。しかし突然、
「うわっ!!!!」
由紀は何かに強く押されて勢い良く前に倒れた。  少女が爆笑する声が聞こえた。少女が背中に乗っているせいで由紀は動けなかった。
「誰なの?」
由紀が聞いた。だがこの笑い声はどこかで聞き覚えがある。
「あたしだよ、シグだよシグ。」
由紀は体をひねって顔を見た。やっぱりシグだ。
「後ろから飛んできてたのに気付かなかったの?」
シグは嬉しそうだが、由紀にとっては災難だ。
「分かったからどいてよ。」
由紀は訴えたが、シグは気が進まないらしい。理由は、
「でもここ気持ちいいなあ。寝心地いいし。お休み。」
荷物はなるべく減らしてあるし、シグは翼で飛べるように体はなるべく軽くなるような構造をしているがそれでもたまらない。
「冗談だって。」
シグはどいた。その日はそこで野宿した。
次の日から二人は「雪谷」という超人族の国を目指した。
一週間程かかって着いた山を下山し、森の中を歩く二人は誰かに見られているような気がした。
「ねえ、誰かに見られてない?」
由紀が訊いた。
「雪谷のみんなじゃないかな。」
シグが言うと同時に四方八方から雪谷の住人たちが出てきた。
「こんにちは、旅人さん達。」
住人達はあいさつした。髪は茶色か黒で眼はみんな灰色だ。もちろん超人族なのでみんな美しくて不老不死だ。独特の雰囲気の衣装を身にまとっている。二人はみんなと歩いた。
雪谷で泊めてもらう舘でガルムと再開した。また、ファルコンという少年にも会った。
「そういや、隊長(コルビ)はどこ行ったんだ?」
ガルムが言った。
「どうせ彼氏とデートじゃないの?」
シグが言った。そしてその言葉は正しかった。
「ひさしぶりじゃないか。」
コルビの彼氏、アルタイルが言った。コルビはちょっとだけ笑って見せてからあいさつ程度に彼に抱きついた。
「元気だった?アル。」
コルビが訊いた。それから二人はいろいろと話し始めた。その話の中でアルタイルの母の話にふれた。
「最近、左手が前よりも動かなくなってきてるんだ。」
アルタイルは顔を曇らせた。
「彼女、今どこにいるの?」
コルビが訊いた。だがちょうどいいタイミングで本人が現れた。コルビは表情を閉ざした。
「あら、コルちゃん来てたの?」
アルタイルの母が言った。彼女は多分、雪谷では一番の年上だ。アルタイルが生まれる前に夫を亡くし、その事故の時に左肩から下が不自由になった。
見ると、前はもっと動かせたはずなのにもうかすかにしか動いていなかった。心配するコルビに大丈夫だと笑って見せるが大丈夫ではないのはお互いに充分わかっていた。
ところで、雪谷の領主、雪谷卿のイブは由紀と会っていた。
「近くにいらっしゃい。」
透き通った声の女性は優しく話かけた。由紀はおそるおそる部屋に入った。黒い髪に青い眼の女性だ。背中には鳥のような大きな銀色の翼が生えている。おそらく天使だろうが、眼に白い光が灯っていないのからすると混血だろう。
イブは優しく微笑んだ。由紀は少しほっとした。彼女は雪谷卿であり、レンジャーの大ボスなので緊張していた。どんな人か見当もつかなかったが、優しそうな人だ。しかし、どこか恐ろしかった。
<解説>
以上、第十六話でした。このながったらしい文章を最後まで読んでくださった方は多分ほとんどいないと思います。もしおられたのだとしたら作者エラノールは感謝感激雨あられです。

 

まずはキャラクター紹介

メインキャラクター
増田由紀(ますだゆき)
名前の由来 増田はそういう姓をどこかで見たことがあるから。由紀は雪から。
年齢 十四か十五歳くらい。
設定 人間の少女だが風使い。運命の風使い。小学校の中学年位の時に自分の風を起こせる特殊な能力に気づいた。命を狙われ周りの人を巻き添いにしない為に失踪した。昔失踪した父とビブロストと暮らしている。どこにでもいそうな中学生だが故郷や大切な人と別れる事を決意するあたりを見ると強さも持っているようだ。

ガルム
名前の由来 北欧神話の冥界の番犬の名前。恐れという意味があるらしい。
年齢 十四か十五歳くらい。
設定 半魔狼の少年。風使いを助ける魔狼。シグの幼馴染み。レンジャー第四隊員。北方魔狼族の族長の父と人間の母を持つ。族長の座を狙った叔父に家族、親戚を殺され氏族の元を離れた。ややぶっきらぼうなところがある。光弾使い。

コルビ
名前の由来 ラテン語でカラスという意味。確か複数形だったような気がする。(自信がない)
年齢 5149歳。
設定 年をくっているが体は若い妙齢の美しい女性。青ざめたように白い肌をしていて額には紅い石がある。恐らく超人族の血をひくと思われるが疑わしい。謎に包まれた過去を持つ。レンジャー第四隊指揮官。闇の魔術師でグレーの光を出して攻撃または防御したり飛行したりカラスに変身したり(大きさは本人の意志で自由に変えられる)ヒーリングしたりといろんな事ができる。オリバートの喫茶店ではガルムも言っているように怪しい雰囲気で陰気と言われる事もあるらしいが感情を表に出さないだけのようにも思える。実は優しい所もある。(泣いている由紀の背中をさするなど)呼び名はカラス。

シグ
名前の由来 元々はシアという名前になる予定だったが発音しにくい気もしたのでシグにした。意味は特になし。
年齢 十四か十五歳くらい。
設定 レンジャー第四隊員。火の悪魔の父と人間の母の娘でリリという姉がいる。ガルムの幼馴染み。生まれた国が火の悪魔によって滅ぼされ姉とともに北方魔狼族の元にやってきた。ガルムの叔父に姉を殺され更に襲いかかられて北方魔狼族の元を離れた。炎使い。背中に大きなコウモリのような翼があり先が矢印のようになった尻尾も生えていて飛ぶことができる。からかいや冷やかしをよく言い、明るい性格。

ファルコン
名前の由来 英語で隼と言う意味。(多分)
年齢 十五か十六歳くらい。
設定 隼族の少年。生まれた国が大規模な噴火にのみこまれた。その国の王子様。テレポーター。隼の頭と足、紫色の羽を持つ。馬術、剣術に長ける。キールという愛馬で旅をする。性格は穏やかな好青年のような感じ。レンジャー第四隊員。

その他のキャラクター

レンジャーの大ボス
まだ登場していないのでレンジャーの大ボスだということ以外分からない。

由紀の母
年齢 中年。
設定 イラストレーター。由紀の母親。由紀と二人暮らしだったが由紀が失踪してからは恐らく一人暮らし。

霧島美紀(きりしまみき)
名前の由来 聞いたことのある名前をたまたま思いついた。
年齢 14歳か15歳。
設定 由紀の同級生で親友。言葉遣いがとても丁寧。

山崎赤音(やまざきあかね)
名前の由来 知合いの名前を寄せ集めた。
年齢 14歳か15歳。
設定 由紀の同級生で親友。

沙月(さつき)
名前の由来 5月。
年齢 14歳か15歳。
設定 由紀の同級生。

周(しゅう)
名前の由来 どっかで聞いたことがある名前だから。
年齢 14か15歳。
設定 由紀の同級生。涼、健太と仲がいい。

涼(りょう)
名前の由来 どっかで聞いたことがある名前だから。
年齢 14か15歳。
設定 由紀の同級生。周、健太と仲がいい。

健太(けんた)
名前の由来 よくある名前。
年齢 14か15歳。
設定 由紀の同級生。周、涼と仲がいい。

長(おさ)
名前の由来 特になし。
年齢 三十代程。
設定 ビブロストの長。

オリバート
名前の由来 オリファントをオリバートと聞き間違えた。
年齢 不明。(多分中年と思われる)
設定 ビブロストの喫茶店の店長。

エイヴァン
名前の由来 聞いたことのある名前だから。
年齢 不明。
設定 ガルムの父親で北方魔狼族の族長。ガルムが十歳の時に族長の地位を狙った弟のインフェルノに噛み殺された。

インフェルノ
名前の由来 地獄と言う意味。(多分)
年齢 不明。
設定 ガルムの叔父。エイヴァンの弟。ガルムが十歳の頃族長の地位を狙ってガルムとガルムの母を除いて親戚を全て噛み殺した。

ガルムの母
年齢 不明。(中年と思われる)
設定 人間。ガルムの母親。インフェルノが夫であるエイヴァンおよび親戚を殺した時に自殺した。

リリ
名前の由来 特になし。
年齢 不明。シグよりは年上だった。
設定 シグの姉。インフェルノに噛み殺された。

ケスト
名前の由来 どっかで聞いた事がある。
年齢 不明
設定 新聞やテレビでは鳶の斬殺鬼と呼ばれていて正体はよくわからないが噂によると邪神らしい。鳶に変身することができる。人間界を滅ぼすのは彼だと言われている。


用語解説

地名

星山村(ほしやまむら)
人間界にある人口の少ない村。由紀の故郷。馬の村と言われている。

ビブロスト
人間界にあるが人間界に住む人間のほとんどはその存在を知らず、足を踏み入れる事もない。人間界と魔界を行き来するのにはビブロストはなくてはならない場所。ワープホールと呼ばれる人間界と魔界をつなぐ出入口がここにしかないと言われているからだ。ビブロストという名前は北欧神話で人間界と天界をつなぐ虹の事をビブロストと呼ぶ。

人間界
主に人間が住む場所。そこに人間以外の特殊能力を持つ者はほとんど住んでおらず、住んでいても正体がばれないようにするか、人目につかないように暮らしている。

魔界
人間も住んでいるがそれ以外の妖怪や悪魔などいろいろな種族が住む場所。

光の世界
人間、超人族、天使、その他の善良な者が住む場所。と言っても、堕落した者も中にはいる。

闇の世界
悪魔、凶暴な類の妖怪など邪悪な生き物が住む場所。闇の世界の生き物は闇の世界の外には出れないが、誤って闇の世界に入り込んだ者などをとり入れたりした場合は別。

特殊能力関連の用語

光の魔術師
光の力の魔術を操る魔術師。正義の対象とされ、邪悪さとはあまり縁がない。

闇の魔術師
闇の力の魔術を操る魔術師。悪の対象とされ、邪悪な力といわれている。

光弾使い(こうだんつかい)
光の弾を出し、操る者を指す。この光の弾は破壊力がある。

炎使い(ほのおつかい)
炎を出し、操る者の事を指す。

種族

人間
これは説明しなくてもわかるな。人間界、光の世界に住んでいる。

魔狼
普通の狼とは異なり体が大きく、人間の姿になることもできる。ただし、人間の姿をしていても狼のような尻尾が生えているのでそれで見分けがつく。人間の中に一緒にいても違和感はないだろう。

悪魔
説明しなくてもわかるけどいろんな種類の悪魔がいる。基本的に闇の世界にいるけど光の世界にもいる。

天使
説明しなくてもわかる。光の世界に住んでいる。

超人族
文字通り超人みたいな人達。背が高くて外見はとても美しく肉体的にも精神的にも人間より遥かにたくましい。野生動物よりも優れた五感と第六感を持つ。不老不死の命を持つが誰かに殺されたり自殺したりした場合は別。(とにかく美形な人達と言ったところだ)

作者エラノールからの言葉
あー疲れた。多分これで以上だと思うよ。ところでまだ登場していないキャラクターがいるし明らかになっていない事もまだあります。まだまだ未熟な作品ですが読んでいただけると嬉しいです。よくわからないお話「旅人達の日常」をかいてみました。興味のある方は読んでみてください。

★旅人達の日常★
エラ ねえーみんなー、今ストーリー考えてたんだけど・・・あれ?コルビは?さっきまで瞑想してたじゃん。
ガルム 彼氏とデートだとかなんとか言って有頂天になってたぜ。
シグ 有頂天なんてあの人にぜんぜん似合ってなかったけど芝居だったのかなあ。コルビの笑顔なんて滅多に見ないけどさっきは例外だった・・・あ、そこにいた。
コルビ ♪ー♪〜♪〜♪ー(←満面の笑み)
ガルム いっつも無表情の奴がキモいぞ。
エラ わかったからもう。で、この話のストーリーなんだけどここに書いたとおりだからちゃんとやってね。そんなに難しくないと思うけど。
コルビ もうやってるわよー?これでいいのお?
由紀 なんか変だなあ。なにが変なんだと思う?
ガルム そいつが有頂天になって満面の笑みなのが変なのに決まってるだろうが!
コルビ ひどーい。
シグ 誰かこいつを止めろ!
ファルコン 彼氏を連れてきたら?
エラ そんな事したらどうなるかわらないよ。
由紀 その彼氏から急用ができたから会えなくなったって電話が今あったよコルビ。
コルビ △■※×◎■☆◯○
由紀 あれ?壊れちゃった。どうしよう、頭叩いたら治るかな?
ガルム お前は呑気だな、由紀。
由紀 頭叩いたら治ると思う?
シグ 治らないに一票。
コルビ ーーー〜〜ーー0〜0
ファルコン 無茶苦茶だよエラノール。これどういう意味?
エラ 要は壊れちゃったってこと。仕方ないから病院に連れて行こう。縛り上げるの手伝って。
せっせと縛り上げる一同。
コルビ 何して遊ぶのお?ねーねー。
エラ 一緒に病院行こうね。お願いだからいい子にしてるんだよ。
コルビ やだー。病院嫌いなのに。
シグ ・・・気持ち悪い。
コルビ やだあ、放してよお、病院やだー、えーん。
由紀 吐いてきていい?
ガルム 行ってこいよ。
解説 どういう訳か壊れてしまったコルビは精神病院にしばらく入院したらしいです。重傷だったらしく治るのに大分かかりました。ちゃんちゃん。
エラ はーいお疲れー。
コルビ なんで私がこんな事しなきゃいけないのよ?
エラ 一本つけるから。
コルビ それならいいわ。
シグ なんかマジで吐きそうになったんだけど・・・って、酒飲むのに夢中で聞いてないじゃん。
由紀 そのセリフは聞いてない方がいいと思うよ。疲れたから寝よう。
<解説>
よくわからない話でしたね、はい。本編ではまだ語られていませんがコルビはお酒が大好きなんです。

旅人放浪記 第十五話戦闘

| コメント(2)

 コルビは森の中にいる何かを追いかけて走っていた。その速度はとにかく速い。途中で立ち止まり辺りを見回した。そしてある一点を睨んだ。
「ははは・・・・ご苦労さん。君もこりないねえ。」
聞き覚えのある不気味な男の声。コルビの前に茶髪で素晴らしい美貌を持ち上品な服を着た不気味な冷笑を浮かべる若い男が現れた。
「ケスト・・・」
コルビが呟いた。前は真っ黒だった目は今は紫と言っていい。
「いくら君が第四隊指揮官でも俺は止められんぞ・・・分かって後を追っかけてきたのか、呆れるよ・・・」
ケストが呟くように言う。
「メトルイ アルカメン サラクス」
コルビが呪文を唱えながら片手を上げて振り下ろすとむちのようなグレーの光がケストに襲いかかったが、ケストの目の前に来たところで消えた。ケストは大きな岩を魔法で浮遊させて投げつけたがコルビはそれを魔法ですり抜けてケストに向かって飛行しながら手できるような仕草をした。ケストはバックステップでよけた。後ろの木が一本切り倒されただけだった。
 ケストは空中にいるコルビに向かって紫の光を何個も投げつけ、コルビは右へ左へよけたりグレーの光で防いだりした。グレーの光が一発ケストに当たったがケストは少しひるんだだけであまり効果はなかった。コルビは舌打ちして体の前で腕を交差させて開くと横長のグレーの光がケストめがけて飛んでいった。それはケストの胴体をすっぽり包み込んで身動きをできなくしたががケストの抵抗のせいでそれはすぐに壊れてしまった。
 この戦闘は一瞬の早業だった。魔術というのは扱いにくいものでこれだけ素早くしようと思うと腕がたたないとまず無理だ。ケストは急に突撃した。コルビは素早く横の方に移動しながら片手を外側に振ってグレーの光を投げたがやはり目が紫のケストにもたらす効果は少ない。コルビは両手でグレーの光線を出しケストは紫の光線を出した。両方の光線がぶつかり合い互いに押し合ったがこれでは勝負がつかないと悟り光線を出すのをやめた。ケストはめくらましの光を出しその光がおさまった頃には姿を消していた。
 コルビは尖った石の欠片を拾って握りしめた。血がにじんだがその傷は一瞬で治った。コルビはその様子をじっと見つめた。不死身のわが身を確かめるように。
 戦場後と化した森には一人の旅人だけが残された。
<解説>
彼女は不死身なのです。どうにかしてケストを止めようとしますが彼は日々強くなっていってるので時が経てば経つ程それは難しくなっていくわけです。

旅人放浪記 第十四話旅路

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 「じゃあな。」
「ばいばい。」
ガルムとファルコンは別れた。
 若葉が茂る山の中に薄い水色の防水パーカー姿のシグがいる。翼と尻尾の様子や表情から推して何かを警戒しているようだ。
 不意に何かに気づいて翼と脚力を使って地面から数メートル飛び上がった。隣の茂みから鉤爪のついた大きな野獣のような手が現れ今まで彼女が立っていた地面をえぐった。シグのはいている黒いズボンが少し裂けた。
「‘‘外に出られるのはほんの一握りの奴らだけ’’?一握りってどのくらいなのさ?!」
大きな手の持ち主は熊と狼を掛け合わせたような野獣だ。とてつもなく大きい。シグはそいつを大きく迂回しながら飛んで死角にまわろうとした。少し無理があったかもしれないが隙を突くことはできそうだ。シグは片手をさっと振り刃のような炎を投げた。それはざしゅっと野獣を切り裂いた。野獣はうなり声をあげた。さらに手から火炎放射のように炎を出してとどめをさした。野獣はあぶり殺された。
 シグはため息をついてズボンを眺めてから肩にかけていたおおきな肩掛けバッグからジーンズを取り出して裂けたズボンとはきかえた。それからシグは怪しい事はないか偵察した。
 広大な草原の中でもうっそうと茂る森に近い場所にコルビが座り込んで髪を切っている。彼女の黒髪は肩に少しかかるくらいの長さになっている。いつもの黒い長袖長ズボンにフードつきの黒いマント姿だ。きれいな夕日があたりを照らしていた。コルビはハサミと手鏡をしまい、エメラルドグリーンの目を細くしながら夕日を見て、
「太陽が紅い・・・血が流されたのね。」
と呟いた。超人族の血を引く者特有の野生動物よりも優れた第六感だ。コルビは急に誰かに見られているような気がした。立ち上がって周りを警戒し、脇の森をじっと睨んだ。そこには何かがいた。
<解説>
久しぶりの更新でした。第四隊のみなさん、仕事中ですね。第六感と五感についてですがコルビは超人族の血を引くため野生動物以上に優れていて夜でも目がきき、ガルムは狼並で夜でも目がきき、ファルコン、シグは普通かそれ以上です。

 明るい光が差し込む森がある。綺麗な花が満開の桜の木の下に一人の少年がいる。十代半ばかわずかに下。整った精悍な顔つきに細い体をしていて短い黒髪に銀色の目を持つ。クリーム色の長ズボンにねずみ色の半袖Tシャツの上から黒いジャケットを着ている。荷物を下ろして座っている。
 そこに馬の蹄の音が近づいてきた。カッカッカッカっと走っているような足音だ。少年は音のする方へ振り返った。現れたのは荷物を積んだ茶色い馬に跨り大きなフードつきの白いローブを着た十代半ば程の少年。隼のような足にくちばしのある隼のような頭。紫の羽がびっしりと生えている。西洋風の愛用の剣と鳥の頭のような形の兜がぶら下がっている。
「ガルム、ずいぶんと探したよ。」
馬に跨る旅人が言う。
「探したってどういう意味だよファルコン。」
ガルムと呼ばれた少年がファルコンという名前らしい少年にぶっきらぼうに言う。ぶっきらぼうに返したガルムとは反対にファルコンには穏やかな好青年のような雰囲気がある。元々彼は穏やかな性格だ。
「二月頃にコルビからガルムと適当に打ち合わせしろって指示があってね。」
馬から降りながら言う。それから鞍と荷物を下ろし始めた。
「それでずっと探してたのさ。シグとはもう打ち合わせはしたよ。相変わらずからかいやら冷やかしやらが好きなんだね、彼女は。」
いつもの穏やかな口調で言う。ファルコンの姿が急に消え、消えると同時にガルムの隣に現れた。テレポートだ。彼はテレポーターなのだ。彼は十歳になるかならないか位の頃、彼の国は大規模な噴火に呑み込まれた。彼はその国の王子様だった。その国は隼族の国だった。隼族とは隼の妖怪と人間の血が混ざった混血の種族だ。その国ではテレポーターの彼だけが生き残った。彼はテレポートだけでなく剣術や馬術にも長けている。
 ガルムとコルビ、それにシグとファルコンの四人はレンジャーと呼ばれる秘密裏に治安を守る組織だ。その存在を知る人物はほとんどいない。第四隊までありガルム達は第四隊だ。他の隊のレンジャーと顔を合わせる事は滅多にないし普段メンバー達は一人で旅をしているため同じ隊の者ともあまり会わない。一つ一つの隊にその隊を指揮する指揮官がいて、その上に四つの隊全てをまとめるいわば大ボスのような存在の一人の人物がいる。第四隊指揮官はコルビだ。ガルム達第四隊は通称「混血隊」と呼ばれている。理由は言うまでもなく全員が混血だからだ。コルビにはおそらく超人族の血が混ざっているだろうがそれすらも疑わしい。超人族はとても美しい不老不死の種族だ。明るく優しくて賢明で強い体を持っている。猛暑も極寒も身にこたえない。だがコルビは不老不死だが不死身でもある。どんな傷でも瞬時に再生する。毒の類もあまり受け付けない。
「僕はあの国で派手にやってきた(殺ってきたと言うべきか)からあそこはだいたい片付いたかな。」
ファルコンが言う。
「じゃあそういう事で打ち合わせは終わりだな。この頃物騒なせいか戦闘が多いな。」
ガルムが言う。
「ところでさ、普段他の隊員と距離がものすごく離れてるのによく一つの隊が成り立つなって思った事ないかい?僕達の指揮官はテレパシーが使えるからいいかもしれないけど。」
ファルコンが言う。
「いくらテレパシーが使えてもあまり役に立たねえよ。ある程度離れると使えなくなる。範囲がかなり限られてるそうだ。」
ガルムが言う。
「不便だねえ。それにあまり会わないのにこれだけ仲良しになるのも不思議だよね。」
ファルコンが世間話をするような口調で言う。
「そうだな。俺とシグは幼馴染みだけど他の奴ともすごく親しいのは確かに不思議だな。あまり会わないのに。」
 二人が合流する何日か前にコルビはビブロストを出た。
「ばいばーい。」
由紀が言う。コルビは背中を向けて歩き去りながら軽く片手を上げた。
<解説>
ガルム放浪記のタイトルが旅人放浪記に変わりました。第一話の時に述べたようにガルム放浪記っていうのは仮タイトルのようなもので変わる場合があります。主役は一体誰かと言うと主役はメインキャラの五人です。(由紀、ガルム、コルビ、シグ、ファルコンの五人)