俺はガルム、半魔狼だ。父は魔狼で母は人間。魔狼は普通大狼の姿が本当の姿で人間の姿が仮の姿だ。人間の姿でもふさふさの尻尾はついたままで消す事はできない。しかし、俺はその逆で人間の姿が本当の姿で尻尾もついたままではなく狼に変身した時だけ尻尾がある。
「わーい、ははは。」
シグが走るのを俺は追いかけていた。俺の父は北方魔狼族の族長だ。その時の俺はまだ氏族の所にいた。十歳だ。シグは火の悪魔の父と人間の母の間に生まれ、人間の国で生まれたが小さい頃に国が火の悪魔によって滅ぼされ、彼女と彼女の姉だけが生き残り、この部族のもとにやってきた。みんなは彼女たちを受け入れ、俺の父の保護下にある。だから仲がいい。
「おい、飛ぶなよ!卑怯だぞ!」
シグが飛び始めた。全く、飛べるのはおめえだけだっつの。
「やーい、やーい、悔しかったら飛んでみろ!」
飛べない者への侮辱か?俺は狼に変身した。銀色の目の白に黒い柄の体長2、5メートルの狼だ。飛び跳ねて捕まえようとしたが無理だった。もう少しだったのに。走り疲れて俺たちは休憩していた。
「もう少しだったのにね。」
「うるせえ。」
シグと俺の会話だ。と、父のいるテントが騒がしくなった。
「エイヴァン、族長は俺だ。なぜ分からない?」
「しつこいぞインフェルノ。」
エイヴァンとは父の名でインフェルノは父の弟の名だ。なにやってんだろう。
「何してるんだろう。」
シグも同じ事を思ってたらしい。それから母とリリさん(つまりシグの姉)の手伝いをしていた。
「ちょっと行ってくる。」
リリさんは父のいる方へ歩いて行った。それから少したって、
「ぎゃー!」
リリさんの悲鳴が聞こえ、途中でぷつりと消えた。何事かと周りの人が集まる。俺たちも集まった。そこには衝撃的な光景があった。なんと父がインフェルノにかみ殺されていたのだ。リリさんも同じ。
「お姉ちゃん、エイヴァンさん・・・」
シグが恐がっているよな、ショックを受けたような声で言う。俺はショックで口もきけなかった。インフェルノは周りを見渡し、今度は親戚を襲い始めた。俺は一人息子で兄弟はいない。そして親戚は次々奴に殺された。呆然とした。母は地面にへたり込んでいる。母はふらふらと立ち上がり、崖に向かって歩きだした。
「母さん、どこ行くんだよ?」
母は何も答えずに歩き続ける。ペースがだんだん速くなり、母が何を考えてるのか俺には分かった。
「やめろよ、母さん!」
母は俺の言葉など聞いていなかった。そして、飛び降りた。
「かあさーん!」
いくら叫んでも無駄だ。もう落ちてしまった。シグはインフェルノに襲われ、必死に炎で対抗していた。火の悪魔の娘であるシグは炎使いなのだ。シグまで行かせるわけにはいかない。俺は光弾を投げた。インフェルノに当たり、奴はひるんだ。
「逃げろ!」
俺が言い、シグは飛んで逃げ、俺は走った。逃げた先で俺たちは別れた。その後ある老爺に会った。あの人にはいろんな事を教わった。旅人になってから俺とシグは再会することになるのだった。再会した時は本当にびっくりした。だがこの話はここまでだ。
相変わらずおばさんには解かり難い世界ですなぁ。しっかし前回からあまり話が繋がっていないような気がするのは私だけかしらん?
前回のはガルム放浪記以外の話もいいかと思って。それにこれは番外編だもん。